経理や会計、財務の仕事は、会社のお金の流れを管理する大切な役割を担っています。
ですが、今の時代では「デジタル化」や「システムの活用」が遅れることで、日々の仕事が大変になるだけでなく、経営判断をするための時間がかかったり、情報が足りなかったりすることがあります。
ここでは、経理や会計の現場でどんな問題があるのか、また、それをどう解決できるかをわかりやすく整理してみました。
「会社のお金の管理をもっと楽にしたい」「次の一手を早く決められるようになりたい」とお考えなら、ぜひ読んでみてください。
きっと、明日から使えるヒントが見つかるはずです。
1. 具体的な問題点
現場ではこのような問題が起こっているのかもしれません。
これらの解決は担当者では解決しがたいものです。管理者あるいは経営者のリーディングがかかせません。
では、問題点を見ていきましょう。貴社にとって、いくつかは当てはまるものがあるのではないでしょうか。
月次決算の遅延
- 月次決算の迅速化が進まず、業績報告が10営業日以上かかる。
- 経営報告が遅延し、迅速な経営判断が妨げられる。
債権・債務管理の曖昧さ
- 取引先別の債権管理が曖昧で、未回収リスクの把握が不十分。
- 債権・債務管理の整備が進まず、取引先ごとの支払期日や回収状況が適切に管理できていない。
キャッシュフロー予測の精度低下
- 販売データと連動したキャッシュフロー予測ができず、資金繰り計画が不安定。
- 販売、在庫、受注データが統合されておらず、資金計画に影響。
税務関連の負担
- 多国籍企業での税務調整が複雑で、監査対応に多大な時間とリソースを要する。
- 税率改定(消費税率、法人税率)への対応遅れにより、会計処理が混乱。
経費管理の非効率性
- 従業員の交通費や出張費の精算が非効率で、経費管理が不透明。
- 経費精算プロセスが属人化し、対応遅れやミスが発生。
小口現金管理の透明性不足
- 小口現金の出納が適切に管理されておらず、不正リスクが高い。
内部取引の未整理
- グループ会社間の内部取引の調整が曖昧で、連結決算時に手作業修正が必要。
固定資産管理の効率化不足
- 固定資産の償却計算や再評価が手動で行われ、時間がかかる。
- 資産台帳と現場での実態が一致しておらず、管理の精度が低い。
財務指標のシナリオ分析未対応
- 利益率、ROA、ROEなどの指標に基づいた「もしも分析」が行えない。
- 為替リスクや金利リスクを考慮したシナリオ分析ツールが未整備。
監査対応の負担増大
- 監査法人からの指摘事項対応に多大な工数がかかる。
- システムに監査証跡がなく、不正リスクや内部統制の問題が残る。
予算編成の非効率
- 予算策定に使用するデータが分散しており、全社的な予算編成が効率的に進まない。
- 各部門で異なるフォーマットを使用しており、統一が困難。
手数料負担の不明確さ
- 取引銀行ごとの手数料負担が不明確で、経費削減の分析が行えない。
資料作成の属人化
- 経営会議用資料が属人化しており、手作業によるデータの正確性に課題が残る。
電子インボイス対応の遅れ
- 電子インボイスのフォーマットが統一されておらず、取引先との調整作業が増大。
監査証跡機能の欠如
- システムに監査証跡機能がなく、不正防止や内部統制の強化が進んでいない。
2. 業務課題
現場業務で解決すべき課題です。
データ管理の課題
- 売掛金・買掛金の消込処理が非効率で、手作業によるミスや遅延が発生。
- データのアクセス権限管理が不十分で、財務データへの内部統制が機能していない。
- 過去の手書き帳簿やPDFデータがシステムに統合されておらず、活用できていない。
業務プロセスの非効率性
- 経費精算が属人化しており、担当者不在時に対応が遅れる。
- 在庫管理システムとの連携不足により、棚卸資産評価が適時に行えない。
- 支払スケジュールの管理不足で、支払遅延によるペナルティが発生。
- 税務調整が部門ごとに異なる経費処理ルールの影響で煩雑化。
技術導入とシステムの課題
- 既存ERPや会計システムが老朽化し、保守に過度な時間とコストがかかる。
- モバイル対応が進まず、リモートワークや現場対応が制限される。
- オンプレミス環境の継続により、クラウドベースの効率的なソリューション導入が遅れる。
スキルと人材の課題
- 経理担当者がBIツールやRPAを活用するスキルに乏しい。
- 新ツール導入後の継続的な研修が不十分で、知識が定着しない。
- 現場社員が業務プロセスに対する課題意識を持たず、改善提案が出てこない。
法規制とコンプライアンス
- 電子インボイスのフォーマット不統一により、取引先との整合性作業が増大。
- システムに監査証跡機能がなく、不正防止や内部統制の課題が残る。
- 取引先情報の更新が遅れ、税務処理や電子インボイス発行でエラーが発生。
分析とレポートの課題
- 販売データや受注データを統合したキャッシュフロー予測ができず、資金計画が不透明。
- 為替リスクや金利リスクを考慮したシナリオ分析が未実施。
- 経営会議資料が手作業依存で作成され、データの正確性に課題。
プロジェクト管理の課題
- 導入プロジェクトの進捗管理が曖昧で、スケジュールや予算が守られない。
- 要件定義が不十分で、システム開発内容が期待と異なる。
- 新システム導入後のサポート体制が不十分で、現場の負担が増大。
3. 経営課題
最後に、経営層が取り組むべき上位レベルの課題です。
データ管理と可視化
- 経営層が意思決定に必要なKPI(営業利益率、ROEなど)をリアルタイムで把握できない。
- グループ会社間で財務・会計データの統一基準がなく、全体の財務状況を迅速に把握できない。
- 過去データがデジタル化されておらず、経営分析に十分活用できていない。
戦略的投資とリソース配分
- DX投資に対するROI(投資対効果)の測定が曖昧で、追加投資の決断が困難。
- DX推進を担う専門人材やプロジェクトリーダーが不足している。
- ITベンダーに依存しすぎており、社内にDX推進能力が蓄積されていない。
法規制とコンプライアンス
- 電子帳簿保存法や電子インボイス制度への対応が遅れており、監査や税務調査時のリスクが高い。
- 海外拠点や子会社での税務・会計規制への対応が不十分。
組織の文化と意識改革
- 経営層がDX推進の必要性を十分に言語化しておらず、全社的な理解が進まない。
- 現場社員が「DXは自分たちに関係がない」と考えているため、抵抗感が強い。
- 部門間でデジタル化の優先順位が異なり、連携が取れない。
データ分析と活用
- BIツールやAIを導入しても、分析結果を経営判断に十分活用できていない。
- 主要経営指標(KPI)の可視化が不十分で、経営戦略の策定が遅れる。
プロジェクト管理
- DX推進プロジェクトのロードマップが不明確で、導入が長期化。
- 外部ベンダー依存が強く、社内の主体性が欠如している。
まとめ
経理・会計・財務の仕事は、会社の経営を支える基盤です。
しかし、現状のままでは、手作業や属人的な業務が多いことで、効率が悪くなったり、ミスが起きたりするリスクがあります。
また、デジタル化や新しい仕組みを取り入れないと、経営判断が遅れたり、競争力を失う可能性もあります。
デジタルトランスフォーメーション(DX)は、これらの課題を解決する大きなチャンスです。
システムを活用してデータを見える化し、業務を効率化することで、経営のスピードと正確性を大幅に向上させることができます。
また、現場の負担を減らし、社員一人ひとりが本来の仕事に集中できる環境を作ることも可能です。
中小企業だからこそ、大規模な投資が難しいと思うかもしれませんが、小さな取り組みから始めることも重要です。
たとえば、日々の経費精算をデジタル化するだけでも、大きな効果が得られます。
これからの時代、経理・会計・財務の分野でのDXは避けられません。
課題を一つずつ解決しながら、会社の未来を見据えた変革を進めていくことが、長期的な成長につながるでしょう。