- 免疫反応としての鼻水、くしゃみ、咳
- 免疫とは
- 炎症とは
- 免疫と炎症の相互作用
- 薬の安易な使用のリスク
- 根治の重要性と感染対策
- 体からの警告としての風邪症状
- 自宅療養の重要性
- 自宅療養時のケア方法
- 受診が必要な場合
下記の情報は、医療専門家の意見に代わるものではありませんので、参考にする際はご注意ください。具体的な医療アドバイスについては、必ず医療機関にご相談ください。
免疫反応としての鼻水、くしゃみ、咳
鼻水、くしゃみ、咳は、病原体を排除するための重要な免疫反応です。また、発熱も同様に病原体の死滅・増殖を抑制し、白血球や抗体を活性化するための免疫反応です。
免疫とは
免疫システムは、体を病気から守るための仕組みです。免疫システムには、自然免疫と適応免疫の2つがあります。
自然免疫(先天性免疫)
- 即時反応
病原体が体内に侵入するとすぐに反応します。 - 非特異的
特定の病原体ではなく、いろいろな病原体に対して働きます。 - 主要な成分
皮膚や粘膜、白血球(好中球やマクロファージなど)。
適応免疫(獲得免疫)
- 遅延反応
病原体に対する反応が少し遅れますが、より特別な反応をします。 - 特異的
特定の病原体をターゲットにし、再び同じ病原体が入るとすぐに反応します。 - 主要な成分
B細胞(抗体を作る)とT細胞(感染した細胞を攻撃する)
炎症とは
炎症は、体が病原体やケガに対して起こす反応です。炎症の目的は、病気やケガを治すことです。
炎症の段階
- 初期反応
病原体やケガが起きると、体はヒスタミンなどを出して血管を広げます。 - 浸潤
白血球が血管から病原体やケガの部分に移動し、病原体を攻撃します。 - 解決
病原体がなくなると、炎症反応が収まり、体は修復を始めます。
炎症の症状
- 発赤(はっせき)
血液の流れが増えて、皮膚が赤くなります。 - 腫れ
血管から液体が漏れて、腫れます。 - 熱感(ねっかん)
血液の流れが増えて、熱く感じます。 - 痛み
神経が刺激されて痛みを感じます。 - 機能障害
ケガした部分が一時的に動かしにくくなることもあります。
免疫と炎症の相互作用
免疫システムと炎症は、一緒に働いて体を守ります。たとえば、病原体が体に入ると、自然免疫がすぐに反応して炎症を引き起こします。この炎症反応が適応免疫を助けて、病原体をより特別な方法で攻撃します。
適切に働く免疫と炎症は、体を健康に保つのに重要です。しかし、過剰に働くと、自己免疫疾患や慢性炎症などの問題を引き起こすことがあります。
薬の安易な使用のリスク
しかし、これらの症状が免疫反応であるにもかかわらず、咳止め薬を服用して咳を止めてしまうと、病原体の排除が妨げられる可能性があります。解熱剤を使用すると、病原体が増殖しやすい温度に体温が下がり、白血球や抗体の活性化を妨げ、感染を長引かせる可能性があります。
根治の重要性と感染対策
薬の服用により症状が一時的に改善しても、根治していない場合、咳が止まったり熱が下がったりすると治ったと勘違いして感染対策を怠ることがあり、その結果、感染を広げる原因になることがあります。そのため、市販の総合感冒薬や咳止め、解熱剤の安易な使用は、感染を広げるリスクがあります。
体からの警告としての風邪症状
風邪とは、ウイルスを排除するために鼻やのどに起きる急性の炎症です。
特にウイルスは鼻やのどの粘膜に付着するため、鼻やのどの粘膜では早い段階で症状が出ることも多いです。
これは、体が安静にするよう警告している状態であり、薬を使って症状を一時的に抑えようとすること自体が問題です。
鼻やのどの違和感
最初にウイルスが付着する鼻やのどは、風邪の引き始めに症状が出やすい部位です。
そのため、風邪の引き始めには、鼻やのどに違和感がある、くしゃみ、鼻水、鼻づまりのどが炎症して赤くなるといった症状が出やすくなります。
寒気がする
寒気は身体がウイルスと戦うために、体温を上げようとして起こる症状です。
そのため、寒気は風邪の引き始めに起きやすい傾向があります。
室温が低くないのにゾクゾクとした寒気を感じる、身体が震える、厚着をして温かくしても寒気や悪寒が治まらない場合は、風邪の引き始めの可能性があるでしょう。
倦怠感がある
風邪の引き始めには、身体がだるい、頭がボーっとする、疲れやすいのような倦怠感を感じる方がいます。
風邪の引き始めに倦怠感が出るのは、身体がウイルスと戦うためにエネルギーを消費するためといわれています。
頭痛・発熱
私たちの身体は、体内に侵入してきたウイルスを排除するために体温を上げます。
発熱すると、同じくらいのタイミングで頭痛を感じる方も多いです。
風邪を引いても発熱がないケースもありますが、風邪の引き始めから体温が変化するケースもあります。
風邪とインフルエンザ、COVID-19の違い
風邪は正式には風邪症候群と呼ばれ、ウイルス性上気道炎の総称です。風邪の中でもインフルエンザウイルスによるものを「インフルエンザ」、SARS-CoV-2ウイルスによるものを「COVID-19」と呼びます。
自宅療養の重要性
インフルエンザは、学校安全保健法により「発症後5日かつ解熱後2日」の出席停止が定められています。一般の方も同様に外出を控えるべきであり、多くの医師が全ての風邪症状の患者に対し「発症後5日かつ解熱後2日」の自宅療養を指導しています。全ての有症状者が自宅療養を実施すれば、外出している人は無症状者のみとなり、感染拡大を防ぐことができます。
自宅療養時のケア方法
風邪症状がある場合、医療機関を受診する必要はなく、自主的に「発症後5日かつ解熱後2日」の自宅療養を行い、解熱剤の使用を極力避け、消化の良い食事、塩分や水分をしっかり摂取し、安静にすることが最も効果的な治療法です。
風邪を長引かせないためには、引き始めに適切な対処をすることが大切です。
風邪の引き始めに適切な対処をすれば、症状を悪化させずに済む可能性もあります。
十分な睡眠と休養を心掛ける
風邪の引き始めは、無理をせずしっかり休むことが大切です。
熱がなくても油断せずに睡眠と休養を取って、身体を休めましょう。
ウイルスと戦うためにも体力を消耗しないようにして、十分に睡眠を取ってください。
症状が軽いと、ついテレビやスマホを見たくなりますが、なるべく見ないようにして横になって過ごすと良いでしょう。
食事でしっかり栄養を摂る
風邪の引き始めには、消化がしやすく温かいものを食べましょう。
消化と吸収にはエネルギーを多く使うため、消化しにくいものを食べると、かえって身体に負担をかける可能性があります。
ですので、無理に食べる必要はありません。
風邪の引き初めには、うどんや雑炊、煮込み料理などがおすすめです。
消化に良い野菜や、身体を温めてくれる生姜などをプラスすると良いでしょう。
水分補給をする
風邪の引き始めは、水分をしっかり摂ることも大切です。
特に発熱がある、食欲がない場合は、身体の水分が不足しやすいので意識して水分を摂るようにしてください。
脱水症状になると意識が朦朧とする可能性もあるので、注意が必要です。
水分補給には、水やスポーツドリンクも良いですが、ドラッグストアなどで販売している経口補水液や、身体が冷えないように、常温か温かい飲み物を摂るのもおすすめです。
温かくして過ごす
風邪の引き始めは、温かくしてゆっくり過ごしましょう。
特に寒気がするときは、身体が熱を上げようとしているので、しっかり温めるようにしてください。
ただし、熱が上がり切って暑いと感じるようになったら、無理に温かくする必要はありません。
受診が必要な場合
自宅療養で症状が改善しない場合は、細菌感染などの可能性も考えられますので、その際は医療機関を受診することをお勧めします。